2020年9月に上場して以降、売上・営業利益ともに右肩上がりとなっている株式会社I-ne。好決算を支える要因と今後の展望について考察してみる。
なお、本記事は株式の売買を推奨するものではなく、“イキイキと豊かに生きていく”ため、世の中の経済情勢やトレンドを知っておく必要があるという考えのもと、対象企業の決算情報をもとに考察する事を目的としている。
※本記事のYouTube動画はこちら▼
株式会社I-neとは?
株式会社I-neは東証プライムの化学業界に上場。①ヘアケア、②美容家電、③スキンケアの3つの事業領域でビジネスを行っている。
ヘアケア事業
ヘアケア部門はBOTANIST(ボタニスト)やYOLU(ヨル)といった商品を主力としたヘアケア商品を販売。デジタルマーケティングの力で美容開拓層・フォロワー層へ商品の魅力を伝達(オンライン戦略)。トレンドを生み育てた上で、ドラッグストアなどオフラインの店舗配荷により広く商品を届ける戦略で急拡大。3つの事業領域の売上の7割強を占める。
BOTANISTオフィシャルサイト 【ボタニスト】|シャンプー・トリートメント・スキンケアの通販サイト植物を育てるように、心と身体をいたわり、毎日をほんの少していねいに暮らすこと。BOTANISTは植物が持つ豊かさと科学の最適なバランスを追求したヘアケア・スキンケア・ボディーケア製品をお届けいたします。BOTANIST オフィシャルサイト
【公式】YOLU[ヨル] ナイトケア ビューティーブランド夜間美容でYOLUがあなたのいい朝をサポート。ナイトケアビューティーブランド YOLU公式WEBサイト。YOLU オフィシャルサイト
美容家電事業
美容家電事業はSALONIA(サロニア)というブランドでドライヤーやヘアアイロンといった美容家電を販売。
美容家電ブランド【SALONIA(サロニア)】公式サイトBEAUTY is simple-続けられるキレイを。美容家電ブランド【SALONIA(サロニア)】の公式サイトです。毎日簡単に続けられる美容家電で、誰でも気軽にシンプルに、美容を楽しめる世界へ。SALONIA オフィシャルサイト
スキンケア事業
スキンケア事業はWrinkFade(リンクフェード)やSalanaru(サラナル)といったスキンケア商品を販売。
WrinkFade(リンクフェード)/公式サイト大人世代のためのシワ・シミケアのスキンケアメイクブランド。人生も肌も、重ねるごとに、美しい私へWrinkFade オフィシャルサイト
【公式】Salanaru(サラナル)プレスキンケアブランドジェル、オイル、ミルクの3段階に変化し、こすらず速落ちを体感できるクレンジングジェルで、まっさら肌を叶えるプレスキンケアブランド。肌悩み、仕上がりの好みで選べる2タイプ(毛穴ケア、くすみケア)|Salanaru(サラナル)公式ブランドサイトSalanaru オフィシャルサイト
株式会社I-neの業績
連結業績
直近3期の決算内容は下記の通り。圧倒的な成長力も魅力ではあるが、営業利益率の向上に力を入れており、取捨選択をしながら地に足を付けた経営を行っている。
2021/12 | 2022/12 | 2023/12月 | |
連結売上高 | 277.3億円 (+21.5%) | 352.6億円 (+27.2%) | 416.4億円 (+18.1%) |
営業利益 | 23.3億円 (+54.4%) | 32.3億円 (+38.5%) | 43.6億円 (+35.8%) |
営業利益率 | 8.4% | 9.2% | 10.5% |
経常利益 | 27.9億円 (+86.5%) | 42.5億円 (+52.5%) | 49.4億円 (+16.3%) |
当期純利益 | 16.9億円 (+74%) | 14.2億円 (▲15.9%) | 39.7億円 (+179%) |
各事業ごとの売上比較
3つの事業ごとの売上で見た場合の2023年12月期と2022年12月期の売上の比較は下記の通り。ヘアケア事業のみ大きな伸びを見せているものの、美容家電事業とスキンケア事業は前年対比で減収となっている。理由として、中長期の収益性向上を優先した結果、利益は良化しているとの事。
ヘアケアの売上は大きな伸びをしているが、その内の97%が特定のブランド(YOLU)の売上アップ。収益拡大につなげる新たなブランドを誕生させられるかが、今後の成長の鍵である。
2022/12 | 2023/12 | |
ヘアケア売上高 | 235.2億円 | 303.2億円 (+28.9%) |
美容家電売上高 | 92.8億円 | 92.2億円 (▲0.6%) |
スキンケア売上高 | 24.6億円 | 21.0億円 (▲14.6%) |
2024年12月期予想と中長期計画に向けた進捗
2024年12月期の業績予想は、売上・利益ともに+10%の成長と、これまでの成長を比較した場合に物足りなく映る。しかしながら、中長期計画達成に向けた7億円の投資を2024年第1Qに実施する特殊要因を見込んでおり、これを見込まない場合の営業利益は前期比+21.6%となる。
一方で、中長期計画に対する進捗を見た場合、売上・営業利益ともにチャレンジングな目標設定となっている。
2023/12 | 2024/12 | 2025/12 中長期計画 | |
連結売上高 | 416.4億円 (+18.1%) | 458.0億円 (+10.0%) | 550.0億円 (+20.1%) |
営業利益 | 43.6億円 (+35.8%) | 46.0億円 (+10.0%) | 71.5億円 (+55.4%) |
営業利益 (特殊要因外) | 43.6億円 (+35.8%) | 53億円 (+21.6%) | 71.5億円 (+34.9%) |
営業利益率 | 10.5% | 10% | 13.0% |
営業利益率 (特殊要因外) | 10.5% | 11.5% | 13.0% |
株式会社I-neの強みと事業等の懸念事項
強み
『トレンドを掴む力、マーケティング力、ブランディング力』が強い。唯一無二の商品を創出する事が、高い営業利益を産む原動力になっていると考える。また、“売る力”として、OMO戦略を推し進める事で、オンラインで商品の価値を伝達した上でオフラインも使って販売を行う事で売上のトップラインを上げている。
事業等の懸念事項
事業等の懸念事項については下記2点。
- 特定のブランド及び商品への依存(主力商品での売上68%)
- 優秀な人財の 採用と育成(広告宣伝及びマーケティング)
主力商品以外の新たなブランドの創出と、本企業の強みであるブランディング化とOMO戦略に長けた優秀な人財を確保する事で事業の安定化を図れると考える。
その他、販路拡大を行う上で海外販売に着手しているが、海外進出に成功するか否かは長期的な繁栄を考えた際に必要不可欠であり、注視していく必要がある。
まとめ
以上、株式会社I-neの好調要因と今後の展望について考察してみた。結論として、勢いではなく地に足を付けた経営を行っている事が良く分かった。良い意味で“負けない経営”を行っており、利益をしっかりと出すよう、先手先手で策を講じていると思う。
本記事を書いたのは、2024年第2Qの決算が出た後であるが、第1Qで7億円の先行投資を行っているものの、前期の2Q終了時の売上・利益を超過。2024年12月期の売上・利益目標の達成は可能であると期待している。
長期的な目線で言えば、新しいブランドの創出と海外展開については、高いハードルがあると思う。是非、この高いハードルを乗り越えて、“幸せの連鎖”があふれる社会の実現に、挑戦し続けていってほしい。
コメント