個人的に注目している株式会社I-neが化粧品企画・販売のトゥヴェールを買収するという発表がされた。この発表を受けて株価が上昇しており、市場からは高評価を受けている。一方で、この買収に対して、どのように評価をすれば良いかという点を個人的に考察してみたので、書き留めておく。
考察する上で、株式会社I-neの事業形態と強み&弱みを把握する必要がある。下記ブログ記事とYouTube動画も参考にしていただければと思う。
株式会社トゥヴェール買収の布石
2024年10月3日に第2四半期決算説明会動画がIR上で発表されたが、今後の方針でM&Aについての言及がされている。ここまで明確にM&Aについて言及されて事はあっただろうか。
今回の株式会社トゥヴェール買収に向けた水面下での交渉が見えてきたことで、発表したのではないかと考える(残念ながら、私はそこまで読めなかったが…)。
いずれにしても、M&Aを活用していく事は明確な成長戦略の一手である事が証明された。そして、M&A発表前に中長期計画550億円に対して500億円まで見えているとの発表があり、今回の株式会社トゥヴェールの売上(41億円)を加味すると中期計画の達成に着実に近づいていると考えられる。
株式会社トゥヴェール買収がもたらすもの
結論として、今回の買収は市場が評価しているように成功すると考える。しかも、短期的な目線ではなく、長期的な目線でだ。株式会社I-neのIRで発表しているように、株式会社I-neの目線は“今期の数字”ではなく、“中期計画・長期計画の達成”なのである。
また、買収というと、どうしても敵対的買収を想像しがちであるが、今回は『win-win』の買収であったのではと考える。それほど、トラヴェール社との相乗効果が期待できると考えているからだ。
株式会社I-neと株式会社トゥヴェールの買収によるメリット
株式会社I-neのメリット
株式会社I-neのメリットは、スキンケア事業の成長戦略の足掛かりを作れた点である。
株式会社I-neは①ヘアケア事業・②美容家電事業・③スキンケア事業の3つの事業領域で事業展開を行っている。しかしながら、全体売上に占める各事業の割合は、①のヘアケア事業が引っ張り、次いで②美容家電事業となり、現時点で③スキンケア事業は全体の売上からすると僅か5%に過ぎない。
一方で、各事業の市場規模は、矢野経済研究所・富士経済グループの調査より、下記の通りとなっている。スキンケア事業はヘアケア事業の2倍となっている。
スキンケア事業で市場を獲得する事ができるかどうかは、将来的な株式会社I-neの売上・利益を伸ばす上で必要不可欠である。
株式会社I-neの現状のスキンケア事業の業績
株式会社I-neの売上はヘアケア事業が牽引している事は間違いない。一方で、スキンケア事業の業績は燻ぶっている状況だ。ブランドを創出し、市場価値を高めていく事に長けた株式会社I-neとはいえ、スキンケア領域で売上・利益を伸ばせずにいる。足場を固め、市場を拡大していく事は一筋縄ではいかないという事である。
今回、株式会社トゥヴェールの販売基盤を手に入れた事は、スキンケア市場の足場固めと拡大に向けた大きな一手であるといえる。
株式会社トゥヴェールのメリット
株式会社トゥヴェールはオンライン販売しか行っておらず、オフライン販売は行っていない。それだけ、オンラインのマーケティング力が高いという事だ。株式会社I-neもオンライン販売におけるマーケティング力の強みを持っており、両者のノウハウを掛け合わせる事で相乗効果が期待できる。
また、株式会社I-neはOMO戦略(オンラインで商品の価値を伝達した上でオフラインも使って販売)を行っており、株式会社トゥヴェールの商品をオフラインで販売する事で新たな販路の拡大が見込めるのではと考える。
補足(株式会社東亜産業子会社の一部株式取得について)
株式会社トゥヴェールの買収とあわせて発表されたのが、東亜産業子会社の一部株式取得だ。上述したように、3つの事業領域の②美容家電事業について、中間マージンを削減しEBITDA約8億円の改善を見込むとの事。
また、美容家電事業は中高価格帯の市場が伸びている。株式会社I-neの美容家電事業はヘアケア事業とは異なり、お手頃な価格で商品を販売する事で市場を確立してきた。一方で、近年の中高価格帯の市場拡大にあわせて、高価格帯への市場参入を先般発表したばかりだ。
本領域で確実に売上・利益を伸ばすための大きな施策である事は間違いない。
まとめ
以上、株式会社I-neの株式会社トゥヴェール買収について考察してみた。前回のブログで、本企業の良さは『勢いではなく地に足を付けた経営を行っている点。良い意味で“負けない経営”を行っており、利益をしっかりと出すよう、先手先手で策を講じている』と評価したが、今回の買収はまさに株式会社I-neの良さが出た買収であった。
今後注視する目線として、今期の目標達成は間違い無いとして、ここについては見る必要は無いと考えている。それよりも、今期の決算も踏まえた上で、2025年12月期に迎える中期計画の達成と長期計画達成の実現性を考察するのみである。
引き続き、株式会社I-neに注目していきたい!
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