2024年8月16日、株式会社パン・パシフィック・インターナショナル(以下、「PPIH」)の2024年6月期決算発表が行われた。売上高2兆950億7700万円(前年同期比8.2%増)、営業利益1401億9300万円(33.2%増)、経常利益1487億900万円(34.0%増)、親会社に帰属する当期利益887億100万円(34.1%増)であった。売上高2兆円突破、35期連続の増収・営業増益。セブン&アイHD、イオン、ファーストリテイリングに次ぐ日本小売業4位だ。中長期計画「Visionary2025」を1年前倒しで達成し、好決算であったといえる。
今回、PPIHの決算発表を受け。決算資料を見ながら、PPIHの中長期計画に基づく成長戦略・ディスカウントストアという業界の現在を俯瞰しながら検証してみた。
なお、本記事は株式の売買を推奨するものではなく、“イキイキと豊かに生きていく”ため、世の中の経済情勢やトレンドを知っておく必要があるという考えのもと、対象企業の決算情報をもとに考察する事を目的としている。
PPIHの好決算の理由
PPIHの過去の決算資料を見て、ユニー社を連結子会社とした2019年6月期以降の5年間における年間の成長率は、売上高(9.88%増)、営業利益(18.26%増)、経常利益(21.32%増)、親会社に帰属する当期利益887億100万円(14.18%増)となっている。今回の決算と対比すると、今回の決算内容は売上高は例年並みではあるものの、その他の各利益の成長率が高い結果となった。決算資料を見ると、その要因を見る上で重要な点は下記4点である。
新規出店(好材料☀)
2024年6月期の新規出店は24店舗である。直近5年の新規出店平均が約18.8店舗である事から、新規出店は多かった1年であった。なお、2025年6月期の新規出店は30店舗+αとしており、新規出店をさらに行う予定となっている。
プライベートブランドの売上伸長(好材料☀)
利益率の高いプライベートブランドの売上が伸びる事は、利益を底上げする効果がある。2024年6月期のプライベートブランドの売上は前期比124%となっており、大きく伸ばしたことが伺える。2025年6月期も130%の売上伸長を見込んでいる。
インバウンド需要の回復における免税売上の伸長(好材料☀)
インバウンド需要による免税売上は1,173億円と、従来の予想(800億円)よりも373億円上振れた。コロナ前の免税売上が684億円である事から、大きく売上を伸ばしている事が分かる。
海外事業の停滞(悪材料☂)
悪材料としては、海外事業の停滞である。北米事業とアジア事業に分けているが、いずれも売上は伸長しているものの、利益は減益となっている。
PPIHの将来性
PPIHの将来性を考えた際にキーとなるのは、次なる中長期計画「Visionary2027」である。重点課題としては、①プライベートブランドの売上増加、②インバウンド戦略、③新規出店、④新規顧客獲得、⑤IT/デジタル戦略の5点。
現在1,400億円の営業利益を2,000億円にする計画であり、かなりチャレンジングな計画となっているが、予想を行う上で参考となるのが、世界のディスカウントストア業界である。
世界のディスカウントストア
デロイトトーマツ社が発表する『世界の小売業ランキング2023』を見ると、世界のディスカウントストア業界は、ドイツの「シュヴァルツグループ」、「アルディ」、アメリカの「ターゲット・コーポレーション」が売上高10兆円を超える巨大企業となっている。これらの平均売上高伸長率は約7%。
なお、PPIHはディスカウントストアに絞ったランキングでいえば世界8位となっている。この業界はヨーロッパとアメリカの企業が上位を占めているが、ほとんどの企業が売上・利益を伸長させており、業界としては成長している市場といえる。
その他、ドイツのディスカウントストアはプライベートブランドの充実と徹底した経営の効率化によって、確固たる地位を得ている。
PPIHの成長を実現する為に注目する点
PPIHの純利益率は約3%。PPIHよりも上位の判明しているディスカウントストアの純利益率が4.56%である事から、利益率の改善は図れる余地があると考える。したがって、中長期戦略に掲げている②インバウンド戦略、③新規出店、④新規顧客獲得によって、トップライン(売上)を上げつつ、①プライベートブランドの売上増加と⑤IT/デジタル戦略によって利益率の改善を図っていけるかどうかが重要となってくる。
売上を伸長させる為に必要なポイント
- インバウンド戦略
- 新規出店
- 新規顧客獲得
利益を伸長させる為に必要なポイント
- プライベートブランドの売上拡大
- IT/デジタル戦略
まとめ(海外展開)
以上、“イキイキと豊かに生きていく”ため、世の中の経済情勢やトレンドを知っておく必要があるという考えのもと、PPIHの決算を見てきた。人によって決算内容をどう捉えるかはあると思うが、個人的にはまだ伸びるのではと考えている。
一方で、今回の決算資料ではそこまで言及は無かったものの、現在のペースで売上・利益を拡大する為には、海外事業が安定的に拡大する基盤を整える事が重要であると考える。これらを注目し、引き続きPPIHの成長を見守っていこうと思う。
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