イキイキと豊かに生きる為には、スポーツを通して得られるものも大きいと考える。という事で、今回はパリ五輪の『スポーツクライミング』について“これだけ押さえていたらスポーツクライミング観戦がより楽しくなる”というポイントに絞って、ご紹介していきたい。
なお、押さえるべきポイントは①スポーツクライミングの歴史と概要、②スポーツクライミングのルールと種目ごとの特徴、③日本人注目選手の3点に絞ってみた。
スポーツクライミングの歴史と概要
スポーツクライミングの歴史
Tokyo2020(東京五輪)で初めて正式競技に採用された(※)スポーツクライミング。その競技の発祥はヨーロッパにおけるロッククライミング。欧州で競技化されていくなかで、複数のルーツがある。
- 1940年代後半から1980年にかけて、ソビエト連邦において自然の岩場で、規定の高さまで登る速さを競う『スピード種目』の競技会を開催
- ロープを確保支点毎に掛け直しながら登る『リード種目』が、1950年代のフランス・ヨセミテでのフリークライミングから派生。1985年、イタリアでは岩場でリードによる初めての競技会が開催、フランスでは室内に設置されたクライミングウォールにおいて競技会が開催
- ロープを使わずに手足のみ(シューズとチョーク)で登る『ボルダー種目』が、1990年代後半に競技化。
※Tokyo2020(東京五輪)では、この3種(スピード・リード・ボルダー)を合わせた「コンバインド(複合)」として初採用。
スポーツクライミングの概要
スポーツクライミングの発祥はヨーロッパにおけるロッククライミングと記載したが、スポーツクライミングを理解する上で、もっと広い概念から知る必要がある。
アルパイン・クライミングとは異なる概念
競技化したロッククライミングであるスポーツクライミングと反対の概念に、アルパイン・クライミングという概念が存在する。これは本物の山岳(自然の山岳。人工壁などではない本物の山岳)の急峻な場所をよじ登ることであり、ロッククライミング、アイスクライミングの他、登山、山岳トラベルも含む。スポーツクライミングはロッククライミングではあるものの、“本物の山岳”を登るわけではない為、アルパイン・クライミングではない。
“クライミング”の中の「ロッククライミング」
“クライミング”という言葉は、岩を対象とする「ロッククライミング」に限らず、氷を登る「アイスクライミング」や木を登る「ツリークライミング」等、広い意味では指す。その中で、スポーツクライミングはロッククライミングを指す。
“ロッククライミング”の中の「フリークライミング」
“ロッククライミング”は道具を使わずに自らの手足だけで自然岩や人工壁を登る“フリークライミング”とギアを使用してクライミングをエイドする(助ける)登り方である“エンドクライミング”に大別される。スポーツクライミングは「フリークライミング」である。
“フリークライミング”の中の「ロープクライミング」と「ボルダリング」
“フリークライミング”は安全確保にロープを使う「ロープクライミング」とロープを使わない「ボルダリング」がある。スポーツクライミングにおいては、「ロープクライミング」である『スピード種目』と『リード種目』である一方で、「ボルダリング」の『ボルダー種目』が存在する。
スポーツクライミングのルールと種目ごとの特徴
スポーツクライミングには、同じ条件で設置された高さ15mの壁を2人の選手が同時に登り速さを競う『スピード種目』、高さ5メートル以下の壁に設定された複数のボルダー(コース)を、制限時間内にいくつ登れたかを競う『ボルダー種目』、制限時間内に高さ12m以上の壁のどの地点まで登れるかを競う『リード種目』の3種目がある。
スポーツクライミングが初めて実施された東京2020大会では、スピード・ボルダー・リードの3つによる複合種目として実施されたが、3つの種目の内、「スピード」と「ボルダー&リード」は選手に求められる能力が異なるため、パリ五輪では、単独種目としての「スピード」と「ボルダー&リード」の複合種目がそれぞれ男女で実施される。
なお、3種目の競技比較については下記の通り。
スピード種目
高さ15メートル、95度に前傾した壁(ウォール)を登りきるタイムを競う。フライングは一発で失格となる。選手にはあらかじめコースが伝えられており、事前に練習することができる。
スピードは1on1形式で、同じ2本のルートで並び合って対戦する。最初に登りきったクライマーが勝者となる。ファイナルまでこの形式で進んでいき、ファイナルで優勝者が決定。
リード種目(ボルダー&リード)
6分の制限時間内に高さ15メートル以上のコースをどの地点まで登れるかを競う種目。完登した選手あるいは同じ高さまで登った選手が複数いる場合は、タイムのよい選手が上位となる。
最終目標はウォールをできる限り高く登ることで、有効なムーブごとにポイントを獲得し、無効・失敗したムーブごとにポイントを失う。獲得できる最大ポイントは100ポイント(最後はボルダリング種目との合計)。
ボルダリング種目(ボルダー&リード)
高さ4メートル程度の壁に難しく設定されたコースを4分の制限時間内にいくつ登れるかを競う。選手は事前に練習ができない中でルートを考えながら登り、トップ(最上部)のホールドを両手で保持することができればそのコースはクリア(完登)となる。選手はロープ無しで臨み、途中で落下しても再度トライできる。
最終目標はウォールをできる限り高く登ることで、クライマーは有効なムーブごとにポイントを獲得し、無効・失敗したムーブごとにポイントを失う。獲得できる最大ポイントは100ポイント(最後はリード種目との合計)。
3種目のまとめ(外部リンク)
日本人注目選手
前回の東京五輪でもメダルを獲得しているスポーツクライミング。パリ五輪でも男子複合の楢﨑智亜選手、女子複合の森秋彩選手がスノーピークの事前メダル獲得予想において銅メダル獲得となっている。
競技 | 日本人選手 | 予選・準決勝 | 決勝 |
女子スピード | – | 8/5~ | 8/7 |
男子スピード | – | 8/6~ | 8/8 |
男子ボルダー&リード | 楢崎 智亜 安楽 宙斗 | 8/5~ | 8/9 |
女子ボルダー&リード | 森 秋彩 野中 生萌 | 8/6~ | 8/10 |
以上、スポーツクライミングについて説明させていただいた。参加する日本選手は実力者揃いであり、是非、メダル獲得に向けて邁進してほしい!
コメント